2015.02.16 Mon TEXT:BANANA CATEGORY:column
イギリスのTelegraphに掲載された先日グラミー賞を受賞したサム・スミスについての記事から2015年以降求めれれる音楽がどのような方向になっているのか少し見えてくる。記事の一部を意訳してご紹介したい。 http://www.telegraph.co.uk/culture/grammys/11399685/Sam-Smiths-Grammys-victory-is-a-heartening-prospect-for-British-pop.html
photo via http://livenation.com/
記事は、ブリティッシュポップミュージックの明るい未来の兆し。としてサム・スミスの受賞理由について、以下を挙げている。
サム・スミスがグラミーで大きな栄光を手にし注目を浴びている。英音楽界にとって、2012年のアデル以降の大きな成功だ。
アデルと共通点を見いだすのはそれほど難しいことでない。
両者とも、ピンナップ向きの風貌ではないし、というよりは、ごく平凡な容姿で、ややぽっちゃり体型である。
エッジがきいている訳でもなく、最新の流行やテクノロジーを駆使しているわけでもない。
彼らは、純粋に楽器と昔ながらのソングライティングのアプローチで、ポップ、すなわち外見だけを見た目だけ全て計算し尽くされたエンターテインメントを目指すのではなく、心の内に秘めたもの、その内面を映し出すメロディーを丁寧に作り込むことに長けている。
スミスは、受賞曲の"Stay with Me"について、”ぼくはある男性に感謝したい。この曲はその男性についての曲で、去年ぼくが恋に落ちた相手さ。”とスピーチで語った。
”ぼくと別れてくれてありがとう、だって君がグラミーを贈ってくれたんだからね。”
2012年のアデルの”Someone like you"も失恋を歌った曲だ。
誰もが経験するであろう失恋を歌うということは、必ず誰かに語りかけてくれる。
そして、スミスによる同性についての愛の歌が業界でここまで”フツウ”に受け入れられていることが、何より心温まる。
が、それ以上にここにはメインストリーム音楽業界、ポップの世界に鋭く切り込んだメッセージがある。
"僕がこの曲を作る前は、自分の曲を聴かせようとあらゆる方法を試したんだ。"
とスミスは言う。
”体重も減らす努力もしたし、すごくヒドい曲も作った。
けど、自分自身でいることにしたら、音楽も自然と流れ出したし、みんな聴くようになった。”
これは英国の音楽業界が学んでいる教訓である。
ポップチャートは、攻めぎ合い、セックスとセンセーションとショックを売りに、同じようなサウンドエフェクト、メロディー、ビジュアル、ダンス、メイク、、、で飽和状態にある。
こうゆう分野はアメリカに任せといて...イギリスはもっと別の得意な分野で勝負できないかと考えた。
ここ10年間で英国のお家芸として成功しているものといえば、Coldplay, Amy Winehouse, Mumford & Sons, Adele, Ed SheeranそしてSam Smith.
彼らは、超ハンサムでもなく、超クールでもなけれど、誠実性があり個性的で他と同調せず、”音楽”と呼ばれる音楽を作っているのは確かだ。それは人々の耳に確実に届いている核のようなものがあるからだ。
これは実に期待できそうだ。ブリティッシュポップが、この飽和状態のアメリカに受け入れられるような新たなステージを生み出してきているのは事実であるようだ。もはや外見や、どんなにクールかっていうのはあまり問題になってないようだ。どんな音を聴かせて、人の心に届かせるかが重要になってきている。クールではなく生き方、響かせ方、内面、、いろいろあるけれど、スミスのメッセージのように”be yourself”がこれからのキーワードになってくるんじゃないか。
ファッションにしても、音楽にしても、常にぐるぐるとトレンドは回り続けている。
2015年以降、しばしこうしたサム・スミスのグラミー賞受賞が象徴するようにシンプルに持っているものをただまっすぐに表現する音楽が受けるようになってきているのかもしれない。
それはEDMがほぼ一周してしまいかけ、地味な音楽に流れが戻ってきたり、ファッションもノームコアがブームになったりするようにそんなタイミングなのかもしれない。